ネパール建築は構造に無頓着?

ネパール・カトマンドウの都市ガイド コラム原稿より

ネパールの伝統的な建物はレンガによる組積造であるにもかかわらず開口部が多い.開けっぴろげなところが多いあたりが何かアジア的である.ヨーロッパなどで感じる組積造の空間とは大きく異なる.しかもアーチという建築技術を持たず開口部は木造の梁と柱でかなり強引ともいえる手法で確保している.西欧の縦長の小窓は私たち建築家の間ではポツ窓と呼ばれたりしている.要するに構造を傷めないようにとポツポツと遠慮がちに壁に窓がとられる事が多いのだ.ゲーテはそのような空間体験から「もっと光を」といっているし、開口部だらけの日本の空間体験から谷崎は「陰影礼賛」となるのだが、はたしてネパールではどうなのか?この強引さは縦方向の構造で顕著に見ることができ、カトマンズのダルバール広場にあるマジュ・デガと呼ばれる高い石段の上に建てられている塔状の寺院の断面図からよく分かる(断面スケッチ図版25、写真).上に行くほど小さくなっている3重の屋根がかけられた塔であるが、最上部の屋根を支えているレンガの組積造の壁面は一階まで届くことはなく2層目の屋根の部分でとぎれてしまい、井桁状に組まれた木造の梁で受け止められ空中に浮かんでいる.これほどではないにしても多くの塔でアクロバットともいえるような構造がとられている.塔だけでなく住宅や王宮の一階部分でも納屋、馬小屋、店舗などとして大きな開口を木造の梁と柱で確保している例が至る所で見られる(写真).一階が柱と梁ですけすけの状態で、その上に重厚なレンガの壁が3階まで載っているトップヘビーなエレベーションを見ると、ネパールの人は構造に対して無頓着なのか大胆なのか(写真パタン、ムル・チョク)?とは言うものの上部の荷重が大きいときは開口部の柱-梁は太くなるだけでなく二重に並行して配置されるし、カトマンズの王宮の中にある塔バサンタプル・バワンでは三重にしてその荷重を受け止めている(写真).柱はMethと呼ばれる横木を介して梁と緊結され、接合部はかなりしっかりとインターロックされている(図版26).日本の木造住宅は最近のものは地震に対しては筋違という斜めの材料で受けることになっているのだが、昔の民家などでは部材の大きさと接合部の強さで地震に対処していたという.それと同じようにこれだけしっかりと結合された柱-梁が何列も並ぶと、地震などの横方向の力に対してもかなり有効なのだろう. 写真・図版は準備中です