カトマンズの多層住宅

 ネパール、カトマンズというとエベレストを代表とする8000m急の山々の連なる寒い山岳都市を連想してしまいがちだが首都カトマンズは標高1300mほど、緯度は奄美大島と同じくらい南にあるので、東京より遥かに暖かい.経済的には特にこれと言った物がなくアジア最貧国の一つである.第一印象はきれいで安全なインド.質素な人々の生活の中で特徴的なのはヒンドゥー教と共に暮らしていること.ヒンドゥーは仏教と似ているが、有名なカースト制度という身分制度があること、生け贄を捧げることなどが仏教と大きく異なっている.この宗教が現在のネパールの生活様式、住宅を決定付けていると言って良いだろう. 20km四方ほどのカトマンズ盆地の文化はネワール族を中心に形作られた共通の建築言語を持つ.特徴は方杖で支えられた軒の深い屋根に守られたレンガ積みの赤っぽい壁と、見事な彫刻を施された木製の窓や出入り口がはめ込まれた開口部にある.王宮、寺院、修道院、住宅など、どの建物も規模や素材など共通しており、街の統一された秩序ある景観を見せるが、中には住宅なのか王宮なのか見分けのつかない建物も多い. 住宅の部屋の配置には宗教の色が色濃くでる.狭い家でも一階は誰々さん、二階は○○さんと水平に分割されることはなく縦割りに塔状に分割される. では住宅の一般的な平面を見てみよう.一階は湿気をさけるため、居室として使われることはなく、店舗や収納、郊外では農作業のスペースや家畜のスペースとして使われる.天井高は総じて低く1.8mに満たない家も多い.二階は寝室、寝室のベッドは3方壁にくっつけて配置される事が多く、上に座って使うこともある.日本のワンルームマンションのベッドと同じ使われ方だ.リビングに当たる部屋は三階になることが多いが家族の構成によっては、一部ベッドルームになっていたりすることもある.4階が食堂と台所.ヒンドゥーの世界では、神聖な場所は上に設けられる.この配置がなかなか宗教なしでは理解しがたいところだ.そこには西洋的な機能主義や価値体系は入り込む余地はない.台所に水道や排水もないところが多いため、水はタンクに入れて自分たちで上に運ぶ.排水はバケツのようなものにためたあと、外にポイッというところもまだまだ多い.炊事は床のレベルが中心.コンロも床におかれてしゃがんだまま調理する.食事も床に皿を並べて胡座をかいてとる.この上に屋根裏のあるときは収納や祈りの場所になる.我々はヒンドゥー教徒ではないのでカーストの高い低い以前の問題で、それらの住宅、特に神聖な場所である台所など上階に行くことはできないと考えた方がよい.上階に行くほど天に近くなり神聖な場所になるということが大原則になっている.我々から見ると、とても質素で中も決して広くはないが、どの家もきちんと清掃、整頓され、気持ちがよい.物質的な豊かさはないがそこには精神的な豊かさというか、宗教を軸とした秩序ある生活を行っている心地よさが充満していた.