コスト操作術

建築知識原稿より

ローコストを目指すと言うことは今日では人件費を削ること、と言いきってほぼ間違えないであろう.これは両刃の剣でもあり熟練した高度な技術を持つ職人を失っていくことも同時に意味する。同じローコスト・省力化と言っても大きく分けると二つの種類に分けられるように思う。一つはプレファブ会社、建て売り業者の行っているものであり、他が私たち建築家が取り組んでいるものだ。プレファブ会社、建て売り業者の行っているものは大量生産品を多量に使いかつ作業を省力化して人件費をうかせる方法だが、この大量生産品の多くに問題を含むと考える.これら大量生産品は、まず品質が均一で高い性能を併せ持たなくてはならない.大量生産したため単に安いだけのものはここでは論外.高い性能とはいつまでも変わらない艶、変質しない色、傷の付きにくい表面などで、住宅のみならず様々な<もの>物品、野菜に至るまで、これらが要求される.ぴかぴかつるつるで、いつまでもできたときと同じ新品の状態を保ち続けるものが<良いもの>と考えられているが、これは中身はさておき、見栄えが良く表面的にきれいなものをよしとする今の日本人の<もの>に対する平均的価値観に根ざす.わび、さびなどの昔からの概念はこれら大量生産品の均質、高性能品に完全に押しのけられてしまった.この方向での技術の進歩は今では塩ビ製の枠にプリント印刷されたドア枠にまでいたり、本物と見分けが付かないほどである.しかしこれら疑似素材は残念ながら視覚的な面からの模倣を抜け出ることはない.このプラスティックの固まりはゴミとなったときは燃えないゴミなのである.プラスティックで表面をコーティングされていない自然素材は傷が付きやすく、汚れやすいかもしれない.そのかわり良い香りを放ち、暖かな感触を与え、経年変化で色や艶は年輪を刻む.ローコストへの挑戦は職人への依存をますます減らしているというジレンマは依然として残るものの、そのような一般的な状況の中で、建築家は様々な方法で試みを続けているといえる。私の方法は月並みとは思うが下記のようなことだ。・手間、人手を減らす工法を考える。しかし、何回か同じような仕事を頼んでいる施工者だとこれらの方法は有効なのだが、なかなか見積もりまで反映されることが少なく、理解してもらうのに設計者の時間と手間がかかかりすぎているのが現状。木造住宅の場合など2×4を参考にするとかなり合理的な軸組にすることができる.在来の方法にこだわらずいろいろなことを試そうと考えている.・職種が多岐に渡らないように工事の種類を絞り込む。・作り付け家具はなるべく大工工事+建具工事で仕上げる。または既製品を使う。家具などの完全手工業製品はこれからもますます高くなっていく傾向にある.・安価な大量生産品ばかりに目を向けず在庫整理品とか間伐材などの、すき間商品を使用する。・流通経路を簡略化した製品の入手方法を考える。これは日本国内だけでなくインターネットなどで海外を見すえた方法が今では有効になってきている。以上のような方法でローコスト化を目指しており、BasicBox-01はこれらを前提とし計画された住宅である.前述したように中身は何であれ表面的に均質、不変のものを最上とする呪縛からます施主に抜け出してもらわない限り建築家-施主の幸福な関係は成り立つはずはなく、難しさがある。つき板のぴかぴかで均質なフローリングよりも節のある無垢の縁甲板のほうが良いと言うような価値観を共有することがローコスト住宅を円滑に進めていく一番重要な要素だと思う。