直裁的な解決が生む住まいの形質

特別企画「住宅設計とディテール再考」より

長者ヶ崎の住宅見学後の鼎談  川口通正 杉浦伝宗 松澤穣

繋留された陸の船
杉浦-元々諸角敬さんはヨットに乗っているものですから海のことをよく知っていて、湿気とか潮とか風の問題を結構風をうまく抜かすような構成をしています.例えば母屋の1階床は杭状の基礎で持ち上げられ地面に浮かんでいるようです.母屋とアトリエ棟に建物も細かく分け、強い風から逃れている.もう一つ特にこれで気に入っているのは、コストに対して彼は非常に敏感で、いつもコストを考えながら苦労してやっているというのがよくディテールにも表れていますね.一つ一つの材料そのものが非常にやすい材料で、構法も合成の梁を使ったり、外壁材についても安くて潮風に対して強い材料を使っているようですし、それと木造の陸屋根というのはある意味では画期的なものですね.非常に挑戦的なこともやっているというので好感が持てます.松澤-この建物は陸に繋留されたヨットといった感じかな.斜面を上がり2階からデッキにアプローチして家に入る.そのデッキに建って海を一望する.思わず両手を腰に、海の男の気分!PC杭で、一階の床高を上げて、地面との繋がりを断ち切って、いつぞやか大海に漕ぎ出していかんとする.テンポラリーな場所といった気分が漂っていました.杉浦-外観というかエレベーションも、例えば黄色いモンドリアン風の外壁のパターンを縦張りにしたり横張にしたり、漂流するヨットというような感じのイメージでやっているのかもしれませんが、そういうのもいいなという気がしますね.川口-これは最大のポイントは素材選びで、木に対する信頼なんですね.いまヨットの話が出てましたが、木造の船みたいな感じなんですよ.表面を削ると腐るので、もちろん防腐塗装をしてあるのですが、削らないでそのまま使うらしいんです.それからよく日が当たることによって木が腐らないということもたぶん諸角さんは知っていて、やはり経験の中で培ったものが利いてくるような気がします.杉浦-やっぱりこの住宅の外壁は全部空気層をとっていますね.松澤-でも学校で教わったのは鉋をかけると、導管にそった木理となるため浸透しにくいけれど、切り放しは導管をブツブツ切ってしまってそこから水分が染み込み、腐りやすいって習ったでしょう.川口-僕もそれで諸角さんに聞いたんですが、鉋をかけていないと染み込んでいくとのことで、たぶん防腐処理が厚くできると言うことでしょうね.これはアメリカの材料なんです.だからむき出しではだめでしょうね.あとは工業化製品をうまく使ったディテールがありました.諸角さんが設計されたストラクチャーの柱にガラスを嵌めるためにアルミのフラットバーを押さえに使ってガラスを固定したり、外部の手すりにスチールワイヤーロープを使ってテンションさせたり、アルミサッシュと木材をうまく納めてアルミサッシュをなるべく隠して、コーキングを思ったよりたくさん使用していないなど、工夫がちゃんとしてあるというのはやっぱり並じゃない.