縁側スペースを見直す

消えていく縁側

今、家を建てようとしている人たちには縁側というものに郷愁を覚える人たちが少なくないと思います.ここであえて郷愁などと書いたのは、残念なことにこのごろさっぱり縁側らしき空間が住宅の中から消えてしまったからです.今の小学生、中学生はマンションでずっと育ってきた子も多く、縁側は知識でしか知らない子も多いのではないでしょうか.これから家を建てようという年代の人々は縁側で遊んだ記憶、夏休みの夜の線香花火や冬の日を浴びながらぽかぽかと気持ちよく過ごした経験はきっと持っているでしょうが、いざ自分の家を建てようと思うとそのスペースはもったいなく感じ、他の部屋に回してしまうというのが現状でしょう.たとえ縁側をとったとしても猫の額のような小さな庭しかない現状では、太陽が燦々と降り注ぐあの記憶にある縁側にはほど遠く、むしろない方が良いように思えます.また縁側はマンションの場合、法規で床面積に含まれないバルコニーにその形を変えてしまい、数字の上での効率重視の点からなかなか縁側のようなはっきりとした用途が見えにくい場所は嫌われてしまっているようです.このようにしてマンション、建て売り住宅など都会やその近郊の住宅地に建てられる新しい建物からこのすばらしい空間が失われつつあるのが残念でなりません.実際小さい住宅の場合20坪、30坪の限られた広さの中から縁側のスペースをひねり出すのは設計を行っている人でもなかなか難しいもので、ついついそのスペースを部屋に割り振ってしまいがちなのが現状です.計算してみるとちょっとした縁側でも2ー3坪程度(小さな家だとなんと全体の面積の10%程度)は食ってしまうものですから難しい選択です.外部ー内部の緩衝地帯として機能していた縁側も、エアコンが普及している現代ではその用途を奪われた形になり、たとえ縁側が無くともどんな部屋でも何とか快適な部屋にしてしまうことができるようになりました.ただしそれには膨大なエネルギーの消費が伴うわけで、省エネが叫ばれるこれからの時代の流れには反するものです. 縁側とは一見無駄なように感じるこの空間も前述のように省エネルギーに役立つ装置として役立つことはもちろん、家全体に広がりと余裕を持たせ、また用途上も多目的な空間として有効に使えるのではないでしょうか.そもそも遊びのないぎりぎりの設計では息が詰まってしまいます.ここで縁側の空間的特徴を簡単に書いておきましょう.縁側という空間は私たち専門家の間では中間領域などと呼ばれています.外でもなく内でもなく庭と部屋の間に挟まれた中間領域は、冬の寒さや夏の強烈な日差しを部屋の中に入れない緩衝地帯で室内環境のコントロール装置と見ることもでき、省エネに役立ちます.一年を通して年がら年中快適な空間とは決していえませんが、冬の昼間は暖かく家で一番の場所で(それは快適な場所をいち早く組み付けだす猫の習性からも分かりますが)、夏には日の沈んだ夕方になれば夕涼みのできる外の涼風を得ることのできる魅力的な空間でもあるのです.機能的に見ると縁側には主要な用途がない代わりに様々な使い方が有ります.部屋と部屋をつなぐ廊下として使われることはもちろん伝統的な民家や農家では縁側は近所の人々にとっては立派な玄関、接客の場になりますし、子供の遊び場にもなります.梅雨時の物干し場、ベンチなどその用途は多種多様です. 新しい型の縁側そこで私は縁側を自分なりに解釈し直し積極的に自分の設計する住宅に、無駄の無いように取り入れようとしています.ただしそのまま移植するのではなく、現代の都市環境の中でも活かすことができないか、新しい型の縁側として考えています.ですから縁側と言ってもまったく違う形の空間で、サンルーム、温室といった部屋のような空間です.従来の縁側のように外でもなく中でもない空間と考えていますから空調もせず夏の昼間は暑く冬の夜は寒いスペースです.しかし冬の天気の良い昼間には十分な熱を得ることができ、開け放てば夏の夜は戸外室のように風の吹き抜ける快適な空間です.形状も細長くないため、季節の良いときにはお茶を飲むことも食事もできる様にしています.このような半戸外的な空間は住宅に広がりと楽しさを与えます.トイレや台所が必ず住宅にあるように、適正に配置された中間領域は良い住宅には絶対に必要なものとの考えから積極的にグリーンハウスを設けるようにしています.

伊勢原の家