11-1.jpg

デザインはこうして決まった!(BasicBox-01)

TJIを使った合理化設計手法

この住宅は四角い箱形でいわゆる屋根というものがない.しかも木造である.一昔前、木造でフラットルーフは漏水事故が起こりやすいためタブーとされた.今回木造でフラットルーフにしたのは屋上を作り遠く相模湾に浮かぶ江ノ島を眺めながらビールの一杯も飲んでみたいなということと、十分とも言えない庭の広さを補うためであった.もちろんそれを可能にしたのは防水性能の高いFRP防水が近年信頼性を増したからという大きな技術的な進歩があったからで、これは冒険でも大胆な試みでもない.FRP防水とは簡単にいうと船やポリバスと呼ばれるバスタブに使われている材料で、ガラス繊維をレジンという接着剤で固めたものである.屋根の形状が平らであっても少々複雑な形をしていて雨漏りのしそうな屋根にも非常に有効な防水層を作ることができる.FRP防水層の上にすのこ状に作ったデッキ材を敷き並べ大きな屋上を造り第二の庭としている.次に建物の配置だが、通常とは違い南北に長く南側に大きな開口部はない.東側に朝日のはいる大きな窓と西側にデッキを介し海へと広がる眺望を確保している.敷地の南側は山の斜面が迫り、通常のように南側に大きな開口を設けてもすぐ前に迫る山の斜面とにらめっこになってしまうので、その代わり西に広がる眺望を得ることにしたためこのような配置となった.もちろん夏の西日はきついので西側の大きな開口部の先には奥行き1.8mのデッキを設け、さらにルーバーを隙間をあけて張り、暑さ対策は施した上での眺望である.平面図を見て気がついた方もいるかもしれないが、この住宅には玄関がない.しかもリビング・ダイニングは二階にある.その理由は小さな建物であったので玄関のスペースももったいなかったことと、二階まで上がると海へと広がる眺望が確保できるためである.日常の生活レベルは開放的で眺望の開けている方が楽しい.外階段で二階のレベルまで上がるとそこは屋根が掛かった半外部空間でリビング・ダイニングの延長でもあるデッキに出る.このデッキが実は縁側であり玄関のスペースであり二階の庭でもある.このように小規模な住宅では色々な機能を重複して持たせることで数字以上に広く感じるスペースを得ることができるのだ.ちなみにこのデッキ部分の工事費は70万円弱であるから、かなりお得な空間だと思う.デッキから入るとリビングは天井高が3.8mもあり一部ロフトの床が掛かっている.もったいないようだがこの天井高が広々としたリビングダイニングを作り出しているといって良い.この空間は台所を含み実は20畳弱の広さなのだが、4畳の台所+6畳のダイニング+10畳のリビングと分けて作るよりずっと広く開放的に仕上がっていることが写真からも感じられると思う.このように一つ一つ見ていくと変わったものばかり、変わったことばかりして作られた住宅に見えるのだが、単に奇をてらうとかではなくそこには深いわけが隠されている.敷地の性格は千差万別.その敷地に一番あった住宅を建てようとするとどうしても他の敷地に建っていた住宅をそのままポンと置き換えるようなわけにはいかなくなってしまうのだ.ぴたりと決まった住宅が完成したとき思わず屋上でビールなど飲みたくなってしまう.